2008年03月26日

横山秀夫作品最後。

昨日の話の続きを少々。

もはやメジャー選手の新しい判断基準としても成立している、ビリー・ビーン提唱のセイバーメトリクス(統計学を応用して野球を分析する)だが、なかなか奥が深い。

例えば、犠打、盗塁、敬遠はかえって相手チームを有利にするとして一切させない。

失策、防御率、自責点なども流動的なもののためにマイナス評価にならない。

逆に投手ならば球速なんかは評価にならない。

9回を投げる抑え投手より7、8回を0点に抑えられる中継ぎが重要視される。(中継ぎ投手の重要性は昨今、レッドソックス岡島といい注目されてますね)

それにより采配でセーブ数の多い投手を作為的に作り、トレードで高く相手チームに買わすというストーブ・リーグでの戦略もあったりする。

‘クローザーは誰でもできる’というビーン曰く、「ガラクタを押し付ける」!

もちろん、ちゃんとアウトのとれる投手が前提だから、ガラクタは酷いが…。

野球通に言わせれば今更な話題だろうけど、結構おもしろかった。


話は大きく変わるが、久しぶりにスクーターに乗ろうとしたら、ものすごい砂を被っていた。

黄砂だ。

かの国は、自国が黄砂を巻きちらしている事実も認めていないらしいが…色んな意味でオリンピックからは目が離せない。

さて、また前フリが長くなりました…。


「臨場」

主人公の倉石検視官が渋過ぎる。

一匹狼で反骨的なそのキャラクターは、これまで横山作品で登場してきた誰よりもヒーロー然としている。

個人的には「影踏み」の主人公、真壁と通ずる雰囲気を感じます。

泥棒と警察官で立場は真逆なのですが…。

クールでかつ、情に厚いという結構劇画調な主人公は、実は読んでて安心感があったりする。

状況に揺れまくる生身の人間が主人公の場合(「クライマーズ・ハイ」とか)、読んでて感情移入し続けるのに結構エネルギーを使いますからね。

特に横山作品は内容が重かったりするから余計に。

もちろんそれはそれで、ピンチに晒されたりするのが危うくて好きなのだが、全部が全部そうだと結果的にパターンになってっちゃうので、全作品読んでる身としてはこういう作品も新鮮でいい。

何せこの主人公の倉石さん、他の作品に出てくる登場人物と比べて、圧倒的にブレない。

ある種超越してるところがあって、直感力、観察眼は神通力に通ずるものがある。

姿は違えど、シャーロック・ホームズのようなものだ。

だから今回も連作なのだけれども、時にポイントでしか出演してなくても圧倒的な存在感をもって描かれてるので、にやっとしてしまう。

ハリウッドのアクション映画と同じで、ある意味パーフェクトに近いキャラクターには感情移入し辛いんですな。

しかし、これもシリーズ化したら嬉しいかも。

なぜかこの作品だけは、主人公の脳内キャスティングがピタリと収まった。

渡瀬恒彦さんだ。

今はタクシー運転手をしているドラマのイメージが強いが、若い頃のような少し危ない男の感じでやってほしいものです。

…と言っても最近、ドラマ版の「半落ち」をやっちゃったからなぁ…。

(横山作品のドラマでは、上川達也が二渡役を連投したように、作品が変わっても一人の俳優が同じ役を演じ続ける場合が多い。
いかにも刑事もののリアリズムって感じで結構好きだ。)


「出口のない海」

若干ネタバレです。

肩を壊した野球青年と人間魚雷回天の話。

時代背景は太平洋戦争中と、横山作品では珍しく時代物だが、

これこそまさに青春のデッドロック。

凄まじい憤りと悲しみに胸を支配される物語だ。

学生時代に特攻隊もののお芝居を何本かやったが、最後はそれでも家族や愛する人を守るために出撃、あるいは華々しく散るのですが、この作品にはそういったある種、破滅のカタルシスのような爽快感はない。

ただ、主人公は誰も、敵兵ですらも殺さないで良かったと静かに海に沈んでゆく。

さすが21世紀に書かれた特攻ものだと、いたく感動しました。

実は野球は好きなんですが、これまでのブログを見て明らかなようにあんまり細かいことまでよく知らない僕には、主人公が最後に完成した魔球がよく分からなかったなぁ。

パームやツー・シームのようなものだろうか?

それともソフトボールでよく聞くライズ(打者の手許で浮き上がる)ボール?


「震度0」

つい最近、やっと読み終わった作品。

文庫でまだ出版されてなく、図書館で借りて読んだ。

実はレンタル5度目にしてようやく読み終えた本。

途中から絶対借りた本で読んでやろうと意地になってしまった。


「事件は会議室で起きてるんじゃない、

事件は現場で起きてるんだ!」



こんなセリフを誰しも一昔前、聞いたことがあると思いますがこれを読む限り、事件は会議室でも起きるようです。

ともかく登場人物の人間関係がとてもドロドロしている。

そのドロリっぷりは全作品を通しても随一。

職住近接とは言葉だけだと便利そうだが、同じところに職場も一緒で昔からの馴染みが長年住むと、灰汁(アク)が出てくる出てくる。

これは俺、無理だ…。

物語は阪神大震災のまさにその日、N県警本部警務課長が失踪するのだが、出てくる人間がどいつも自分のことしか考えていない(唯一、堀川はまともに見えるが、この男ですら家族から見れば…)ので、なかなか感情移入できる人物がいず、読んでて渇を入れたくなったりする。

700キロ離れたかの地では、大変なことになっているというのに・・・もちろんこれも筆者一流の計算で、僕はまんまとしてやられていたりする。

実は失踪した警務課長不破義人が一番まともそうなのだが…。

悲劇のスケールがギリシャ劇のようだ。

事件とは本当に、当事者もそうだが、時に周りの人間を深く傷つけ狂わせてしまう…。

しかし最近の横山さんの作品の中では、ヒーローが不在の個人的には一番、‘らしい’作品でした。

まるで映像のカット割りのように、登場人物ごとに章を細かく刻んだのもテンポがあってのめり込ませる。

やっぱりこの方はすごい。

それにしても改めて阪神大震災の被害を数字で見ると、言葉を無くすものがある。

これにてしばらく横山作品を読むのはお休みになるだろうが、最後に読めて良かったと思える作品でした!


思えば、横山秀夫さんの作品って、たくさんドラマ化してるんですよね。


そのほとんどを見過ごしてるとは

ファンとしていかがなものか?



と自分自身でも思うのですが、いつかは横山秀夫さんの原作ドラマ、あるいは映画に出るぞ!と心に夢を抱いて今夜はもう寝ようと思います。

いやー、長くなりました。
posted by たいき at 18:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 横山秀夫
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