2008年03月20日

横山秀夫作品。

空いた時間にちょこちょこっと読める、短編小説が好きだ。

たまたま時間潰しに買った一冊から、ずっぽりハマった作家が横山秀夫さんだ。

最近やっと全小説コンプリートしたので、その感想など・・・。


「ルパンの消息」

デビュー作だが刊行は05年。

その後の作品に出てくる個性的な登場人物達を考えると、登場人物が劇画っぽくて浅い・・・と思わせるのは、いかにその後の作品の人物描写が深まってるかですね。

警察小説の名手ということで、圧倒的に男の世界を男目線で描くのが横山さんの特徴だと思いますが、女性キャラが添え物にならないように毎度工夫が見られます。(「ルパン〜」に関してはちょっと添え物になっちゃってるかも・・・)

また、横山作品は本人も読者に‘G’(負荷)がかかるような作品を目指している通り、決してハッピーエンドで終わらない作品が多く、重いテーマや内容のものも多いです。

重い物語の中で、一筋の希望の光がキラリと光ったりするのが、堪らないところでもありますが、どうも自分はどんな媒体のものでも、作品に触れる視聴者としては多分にMっ気があるようで・・・このデビュー作、「ルパンの消息」でも‘G’がかかりましたね。


「陰の季節」

警察内の人事担当という地味なパートが一躍主役となる、好短編。

新しい形の警察小説ということで多いに注目されたのは承知の事実。

「ルパンの消息」から比べて、リアリティーがともかく凄い(本人曰く執念の描き込みによるものだと思う)のと、出てくる人間が大人の打算や狡猾さ、そして仕事への厳しさに溢れていて圧倒される。

実は個人的には人事担当の二渡さんが活躍する話よりも、鑑識課の婦人警官の悲哀が浮き彫りになる「黒い線」が好きだったりする。

これは容疑者などの似顔絵を書く婦警にスポットを当ててるが、もうノッケから目の付け所が違う。


「動機」

「陰の季節」に引き続き、これまた異色の短編集。

表題作「動機」のキャリアとノンキャリアの縄張り争いが熱い。が、他の作品でも全体的に言えるのだが、そんなことやってないでとっとと事件を解決しろと言いたい。

前作の人事課のエース、二渡さんがここでも出てくるが、すでに生きた伝説のような巨人になっている。

「陰の季節」であれだけ揺れた内面を見せた二渡りさんだが、はたから見てる人には恐ろしくクールな人に映るのでしょう。

普通に生きてて、心情を吐露したり感情を爆発させる状況って、あんまり無いですよね。

そこらへん、自分はまだまだ本音で生きてる部類の人間になるのかなぁと思うと、嬉しいのか、やっぱり全然大人になりきれてないなぁとか微妙な気持ちになったりします。

たった一度の過ちも、人生は許してはくれないと言わんばかりの「逆転の夏」が重苦しく胸に迫る。

自分はどれだけ許されてきたことか・・・。


「半落ち」

刊行物の中では初の長編。

妻を殺したと自首してきた主人公、梶聡一郎を取り巻く警察内の人間模様を描く。

警察官が罪を犯すことと、それに対しての警察の反応がリアルで重い。

主人公に関わった人物順に章が移るので、テンポ良くどんどん読み進めてしまう。

ここらへん、実は短編集のような構成になっていて、つくづく横山さんは短編がうまい。

警察小説の名手は短編の名手でもありました。

映像化された映画、テレビ、ともに未見。


「顔 FACE」

短編「陰の季節」の「黒の線」で上司に「だから女は使えねぇ!」と罵倒された、似顔絵婦警、平野瑞穂ちゃんが主人公のこれまた短編集。

瑞穂ちゃん、今回は「羊達の沈黙」のJ・フォスターなみに大活躍。

女性キャラの心理描写がいい。

基本的に、横山さんの作品のハードボイルドっぷりにはいつもワクワクする。

短編集の中でも女性読者を少し意識したのか、あまり重過ぎないので読後感も軽い。

これを読んでた頃くらいが一番ハマってた時期じゃないだろうか?

基本的に横山作品は年代不同で読んだが、一番好きな「第三の時効」や「クライマーズ・ハイ」も同時期に読み狂ったと思う。

長くなるので2部に分けてアップしようと思います。

2部はお気に入り作品目白押し。
posted by たいき at 13:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 横山秀夫
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